院内で行う歯石除去処置
当院では麻酔下での歯周病治療を行っています。
歯周病の進行状態と必要な治療
ステージ1 歯肉炎のみ(歯周病なし)
治療 歯石取り、歯肉ポケットの清掃、歯面の研磨
処置時間の目安 15〜30分
費用の目安 30000円
------------------ 完全治癒可能の壁 --------------------
ステージ2 初期歯周病
治療 ステージ1に加えて、歯肉フラップ手術、抗生物質の注入
処置時間の目安 1時間
費用の目安 40000〜50000円
ステージ3 中程度歯周病
治療 ステージ2に加えて、一部の歯の抜歯とフラップ形成
処置時間の目安 1時間〜2時間
費用の目安 50000〜60000円
------------------ 歯の保存可能の壁 --------------------
ステージ4 重度歯周病
治療 ステージ3に加えて、多数の歯の抜歯とフラップ形成術
処置時間の目安 2時間〜
(麻酔が長時間になると予想される場合は、日を変えて2回に分けて行うこともあります)
費用の目安 70000〜100000円
麻酔前検査と麻酔管理について
当院では麻酔下の歯周病治療を行うにあたり、万全な麻酔を行うために麻酔前検査と麻酔モニターと人工呼吸器を用いた麻酔管理を行っています。
麻酔前検査
【血液検査】
隠れた疾患の有無や麻酔中、麻酔後に組織・臓器に異常が出ないか確認するための血液検査を行います。
貧血や各臓器の数値に異常が見つかった場合は全身の精密検査に移行し、麻酔処置は延期・中止します。
【心電図検査】
麻酔中の血圧、血流の維持に必要な心臓の働きを検査します。
不整脈が見つかった場合は、心臓の精密検査に移行し、麻酔処置は延期・中止します。
麻酔管理
【動物用生体情報モニター】
心電図、呼気中二酸化炭素分圧、吸気酸素濃度、動脈血酸素飽和度、血圧、体温、麻酔ガス濃度を常時モニターし、異常があればすぐに対応できます。
【人工呼吸器】
器械により呼吸を管理することで、無呼吸や換気量低下の危険を防止しています。
実践ハミガキ
ハミガキのコツ 〜ハミガキ上達への道 8ステップ〜
<スモールステップに分ける>
歯みがきトレーニングを成功させるには、大猫に極力怪しませず、不快感を与えず、快感を与えることが大切であり、 そのためには歯みがきの段階をスモールステップに分け、徐々に馴らしていくのが効果的です。
【ステップ1】
口に触っても嫌がらない
------------------- ハミガキの壁 --------------------
【ステップ2】
唇をめくって指を口に入れ、歯を触ることができる
【ステップ3】
指にデンタルペーストをつけて、指みがきができる
【ステップ4】
ハミガキシートでみがくことができる
------------------- 歯ブラシの壁 --------------------
【ステップ5】
歯ブラシにデンタルペーストをつけ、口の中に入れることができる
【ステップ6】
歯ブラシで歯の外側をみがくことができる
------------------- 上級者の壁 --------------------
【ステップ7】
口を開かせることができる
【ステップ8】
歯の内側やかみ合わせ部分をみがくことができる。
<ポイント>
【姿勢】
正面向き、横につける、寝かせるなど色々あります。動物と飼い主の体の大きさや関係性によって取りやすい姿勢をとりましょう。
基本的には口の中が見えやすい姿勢が良いです。
【歯ブラシの持ち方】
基本はペングリップ(えんぴつを持つように持つ)です。
(動画では順手持ちになっていますが、ペングリップのほうが良いです。)
歯ブラシの毛先を振動させるように細かく数ミリ動かすと良いでしょう。
【大切なステップバック】
早くハミガキができるようになりたいと思うのは自然ですが、どこかのステップでつまづくことも良くあります。そのときは、いったん前のステップにバックしてるのも大切です。 つまづきは前の段階の慣れや熟練が不十分だったときに起こりやすいためです。
急がば回れ。
【子どものときから慣らす】
子どもの頃からハミガキに慣らしていくのが最も効果的です。
【楽しいことと結びつける】
ハミガキをすると美味しい、ハミガキをすると楽しいなど、ハミガキの各ステップを動物にとっての「楽しい」と結びつけることが大切です。
【動物をよく観察する】
日ごろから、おうちの子が何に喜ぶかをよく観察しておくと、ハミガキをしたときのご褒美に効果的に使えます。ハミガキだけではなく他のトレーニングでも役立ちます。
処置後の歯科検診
歯の処置を行ったあとは、デンタルケアとともに定期的な検診も大切です。
ブラックライトを用いた歯垢のチェック
ブラックライトとは、わずかに眼で見える長波長の紫外線を放射する電灯です。
ブラックライトの光自体は人間の目にほとんど見えないが、ブラックライトを当てた物体は内部に含まれる蛍光物質だけが発光します。
細菌には、蛍光物質を持つものがあるため、ブラックライトを当てることにより、それらの菌の繁殖を確認できます
ハミガキを行う際にブラックライトを使用することで、みがき残しをなくし適切なデンタルケアができているか確認することができます。
サプリメントを用いた口腔内衛生ケア
ハミガキや歯石取りなどの処置はできないが口臭が気になる時や、歯周病予防の為に何かできることをしたい場合などは補助的にサプリメントを使用することをお勧めします
デンタルバイオには口腔内のフローラを改善することができる可能性がある善玉菌として分離された、Streptococcus salivarius K12株が含まれています。
K12株(世界12カ国PCT特許登録)は、ニュージーランドのオタゴ大学の研究で2%程度いるとされる口臭が本質的に少ないヒトから発見された口腔用善玉菌です。
K12株は有害菌の増殖を抑制する静菌性ペプチドSalvaricinA2と、死滅効果のあるSalvaricinBを同時に産生することで、歯周病菌の増殖を抑制したり、口臭を減らすことが確認されています。
また、その後、免疫調節作用や炎症軽減効果もあることが確認されました。
K12株は、ヒトの口腔から分離された菌ですが、最近の研究で、歯周病への対処が必要な犬に対して投与した場合でも、歯周病の発生が顕著に抑制されるという結果が示されたのです。
K12株は元々人の口腔に住み着いていた安全性の高い菌ですが、人に対する安全性試験で安全性を実証することで、米国ではself-GRASに認証されています。
使用方法は、1日1粒〜2粒を飲ませるのを2週間続けます。ほとんどの子で口臭が軽減したのを感じられると思います。その後は予防のために継続して与えることもできます。
2週間で効果を感じられなかった場合は、サプリでは対応できない進行した歯周病である可能性があるので、医薬品やスケーリングを行う必要があります。
インターベリーはイヌインターフェロンαを産生する遺伝子組換えイチゴを粉末にしたものです。
低容量のイヌインターフェロンαが口腔内粘膜に投与されると免疫担当細胞の受容体に結合し、投与された部分の免疫機能が改善・亢進されると考えられています。
その結果、抗菌物質であるβディフェンシンが誘導され、歯周病原因細菌を減らし歯肉炎を軽減させます。
さらに何らかの情報伝達を介して全身的な免疫賦活化作用を示すと考えられています。
これらの作用により、口臭の軽減と歯周病予防効果があると推定されています。
使用方法は、1箱に入っている粉を10等分にします。1回分を水で濡らして混ぜ、ペースト状にします。それを上下左右の歯肉に塗りこみます。これを週に2回、合計5週行います。
ほとんどの子で3回目ぐらいで口臭が軽減したのを感じられると思います。10回分終わったあとは約1年間歯肉炎改善効果が期待できます。
※ サプリメントはあくまで予防的・補助的に用いるものなので、すでに進行した歯周病に罹患している場合は医薬品やスケーリングによる治療が必要です。