ワクチン接種


近年のワクチン接種について


 ワクチン接種の目的は、感染すると重症になり最悪死に至ることもあるウイルス感染から犬猫を守ることにあります。
 ここでいうワクチンとは様々なウイルス感染から犬猫を守るための混合ワクチンのことです。犬なら5種や8種、猫なら3種や6種などがあります。



ワクチン3年間隔接種説



 これまで長い間、犬猫のワクチン接種は1年に1回投与することが一般的でしたが、ここ数年、犬猫のワクチン接種は3年に1回で良いという話が出回るようになりました。 これは、2010年に世界小動物獣医師会(World Small Animal Veterinary Association, WSAVA)によって発表されたワクチン接種ガイドライン改訂版に記載されている方法がもとになっていると思われます。

 このガイドラインではワクチンをコアワクチン(全頭に打つべきワクチン)とノンコアワクチン(必要な個体にのみ打つべきワクチン)に分け、コアワクチンは3年間隔で打ち、ノンコアワクチンは毎年打つという方法を推奨しています。



コアワクチン



 基本的には1年に1回追加接種をすることになっています。

 しかし、様々な事情(アレルギーがある、重大な疾病にかかっている、怖いから打ちたくない、経済的な理由)で1年に1回のワクチン接種ができない場合はガイドラインにのっとって間隔をあけることが可能です。

 ただし、間隔をあけて良いかは個々の飼育状況などによって異なります。多頭飼い、外飼い、不特定多数の動物がいるところ(ドッグカフェ、ドッグラン、集合注射、自然公園など)へ行く、飼い主が不特定多数の動物と接する仕事をしている、 などの場合はワクチンによる防御効果が3年間十分に発揮されるか疑問なので、もっと短い間隔で追加接種をするか、最低でも1年に1回はワクチン抗体価の検査をする必要があります。

 ワクチン抗体価検査とはコアワクチンによって防御できるウイルス(ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス、犬パルボウイルス)に対する抗体がどれくらいあるかを調べる検査です。 これらのウイルスに対する防御力は抗体価と相関性があるので、抗体価が十分に高ければ防御効果は十分にあるということがわかります。

 犬ではこれらの抗体価を検査センターに送ることで調べることができます。



 猫では抗体価と防御効果に相関性があるのが猫パルボウイルスだけなので、ヘルペスウイルス、カリシウイルス、猫白血病ウイルスなどの抗体価を測定しても防御効果の有無を判定することはできません。

 また、ワクチンガイドラインにてコアワクチンを3年間隔にしてもよいと判断したのは、ワクチン接種3年後の効果保有率が90%〜100%を示したことが理由ですが、日本で2016年に発表された調査報告では ワクチン接種3年後にコアワクチンすべての効果保有率は60%とだったという結果が出ています。

 仮に2頭飼いだった場合は2頭ともに防御効果がある確率は36%、3頭飼いだった場合は約21%になります。

 ここで重要なのが、WSAVAが発表した文書はガイドラインにすぎず、マニュアルではないという点です。日本のワクチン製造会社によるマニュアルでは、いまだに1年に1回の追加接種を推奨しています。

ガイドライン マニュアル

 日本の調査報告での感染阻止率を見ると欧米の調査報告をそのまま日本に当てはめることもできないと思われ、むしろ無作為に3年間隔にすることは危険であると思われます。 また、仮に3年間隔でのワクチン接種で感染阻止できなかった場合の法的保護の根拠もありません。

 これからのワクチン接種はヘルススプロモーションの一環として個々にあわせたオーダーメイド医療として提供すべきものです。それぞれの動物の飼育環境や健康状態、飼い主さんの生活や考え方に合わせて最適なワクチン接種を行いましょう。

 ワクチン接種に関するご相談は、当院にお気軽にお尋ねください。



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